知人から飲みのお誘いがありました。
飲めない私ですが、最近飲み会疲れしていたので丁重にお断り申し上げたら、「んじゃ、趣味で美味い蕎麦を打つ人を呼ぶから、ウチにご飯食べにおいでよー」と招待されました。
蕎麦に目のないワタクシ、「そーゆーことならゼヒゼヒじゅるじゅる」と、手のひらを返したように二つ返事。
さらっと蕎麦をいただいて~などと軽い気持ちで家人と二人で出かけましたよ。
知人の家に着くともうすっかり準備が整っていて、挨拶も早々にさっそく食卓につきました。
これがその夜の驚くべき晩餐の幕開けだったのでした。
料理人さんはとても気さくな方で、プロの方ではないとは言え、蕎麦や料理にたいする情熱はもちろんのこと、その食材に対するこだわりがすごいのです。
まずは、既にテーブルに並んだ付き出しの品。
蕗と蕨の砂糖菓子。
京都の老舗のレシピが簡単に紹介されていたのを自分で試行錯誤して作ったものとか。この蕗も自分の畑で作った江戸蕗だそうです。その分山蕗に比べてちよっと香りが物足りないかな、とご本人は仰ってました。
漬物6種。
・小茄子の糠漬
茄子は何とか言う(失念)特別な小さい茄子であるが、毎朝収穫したものを重石を置いて小樽に漬け込んでいくのだそうです。漬けた茄子の色を同じように均一に落ち着かせるために、まとまった量を同時に収穫しないと色むらができるそうで、200もの苗を植えているとの事。何度も小樽で漬け変えて、最終的に二つほどの大きな樽にまとめるという、大変手の込んだものです。そんなこんなで毎朝膨大な量を収穫するハメになり、どっかに売れないかなぁ・・・とも(笑)
・茗荷の味噌漬け
3年間熟成させる味噌の樽の一番底に入れて漬けてあるそうです。つまり3年かけて味噌が無くなった頃にやっと食べられると言う珍品。味噌から出る汁の味がたっぷり染み込んでいます。しかも茗荷の香りはしっかりと。
・こごみの酢漬け
茹でてマヨネーズor醤油くらいしか思い浮かばなかったこごみが、こんなに柔らかくて美味しい酢漬けになるとは!
・梅干
ワタクシ、最近の甘みのある水あめやカツオ味などの梅干が嫌いです。おばあちゃんの作ったすっぱ~い梅干が好きなんです。この梅干は量産品のように一度塩抜きをしてクエン酸や水あめ等の添加物を入れた梅干とは全く違います。ブラボー
・大根漬
部屋に持ち込むとぷんぷん匂うようなお新香でござる(^o^)
近頃こんな大根漬にはまず出会いません。
・胡瓜の糠漬
浅く漬けたシャキシャキのみずみずしい胡瓜。胡瓜ってホントはこんな味だったっけ?みたいな新鮮な風味です。
(あたたかみのある器は全て家のご主人が趣味で集められたものです。)
・蕨の油炒め
添えてある生姜も梅干を漬ける時に同時に漬け込んだものだそうです。
ここまで食べて、驚くべきことに上記食材の殆んど全てが、自分の畑で完全無農薬で栽培し、調理すると言う凄さ。
野菜類の他にも米も無農薬で作っていて、除草などの苦労話をお聞きしましたが、気が遠くなる作業です。
そして、いよいよ蕎麦の登場です。
蕎麦自体は料理人さんのお兄さんが耕作されているそうです。
蕎麦のツヤやぷりんとした感じは清水屋さんの蕎麦に似ていますが、こちらは二八です。
清水屋さんと最も違うのは、殻ごと挽いてあるので、黒っぽくて玄蕎麦の風味が強いこと。粉の打ち始めは砂の混ざった粉を捏ねているような感じなのだそうです。
家庭用のガスなのでちょっと火力が弱くて・・・などと仰いますが、ウマイのナンのって。どんどん食べてという御言葉に甘えて二枚をペロリ。
料理人さんの家には、近所のご老人カルテットが「これで打っとくれぇ」と時々そば粉を持参して来るらしいのですが、そのたびに「ウメェ~もういつ死んでもエエ~」と言われるらしいです。「いや、ウチで息引き取られても困るから、家に帰ってからにして下さい」と言ってるそうな(笑)
さて、ざる2枚を平らげて満足していると、家の主人が「冷たいのは飽きたろうから、そろそろ温蕎麦行く?」と仰る。
普段より蕎麦は冷たいのに限るという自論があるのですが、こうなったら幾らでも食べてみたいっす。そしてしばらくして出てきたのが・・・・
キタ━━━━(゚∇゚)━━━━ !!!!!
松茸蕎麦です\(◎o◎)/!しかもデカっ!
ワタクシが普段温蕎麦をあまり食べないのは、蕎麦がふにゃっとして歯ごたえがなくなり、蕎麦の風味が消えるのが嫌なのですが、これは全然そんなことありません。
お出汁も濃すぎず、松茸の香りと蕎麦の風味、上品な出汁がベストハーモニー!!テクニック抜群のプレーヤーたちが絶妙な個性を出し合っているのに、すばらしくまとまりのある曲が織り出されるトリオバンドのようです。
う、うますぎ~。
思わず息を引き取りそうになりました(^_^;)
ちなみに山菜や茸取りはも全て自分で山に入って探されるとのことでした。もちろんこの時期ですから、松茸は冷凍してあったものですが、しゃきしゃきとした歯ざわりや強い香りなどは冷凍ものとは思えません。
そしてこの後、「沢山食べてもらえるのが一番嬉しい」とさらにざるをもう一枚。あうあう・・・至福(●^o^●)
蕎麦を腹いっぱい喰うのは野暮だとも言われますが、野暮とでも何とでも言ってくれぃ!ウマいもんはウマい!
食後にコーヒーとケーキをいただきながら、料理人さんも加わって歓談。
この方のお話が面白いこと面白いこと。
前述の無農薬野菜の栽培の苦労話を面白可笑しく話して下さいました。
少しづつ、できるだけ自分で家に手を入れているとのことで、いずれ蕎麦料理を出す店を、と思ってらっしゃるようです。
印象的だった話が一つ。
無農薬の米って農協では買い取ってくれないらしいですね。
その理由は、農薬使ってないから・・・。
おかしな話だねぇ。
連作障害を防ぐために土壌消毒に一般的に使用する農薬の有害性や、農家では収穫するトマトなども、自家消費用と出荷用は別けて作っていたりするとか、ちょっと背筋がゾクッとする話も聞けました。
あっという間に夜が更けて気がつけば日付が変わろうという時間に・・・。
ご招待いただいた知人ご夫妻と、文字通り手塩にかけた料理を作って下さった料理人さんに感謝しながら家路に着きました。